水面から東京の景色を満喫する非日常。大正創業の老舗が提案するモダンな屋形船
東京の風情ある文化のひとつ、屋形船。
大きな川がいくつもある東東京は、水辺の風景が豊かな場所でもあります。
今回訪れたのは、大正5年創業で100年以上の歴史をもつ屋形船の老舗、あみ達です。停泊中の屋形船の中で、代表の高橋さんにお話を伺いました。
時代と共に変化してきた船の文化
屋形船のルーツは、平安時代に宮中の人々が楽しんでいた「舟遊び」だと言われています。
「当時の和歌にも詠まれていたりと、昔は貴族の方々が嗜むものだったのですが、江戸時代あたりから庶民の間でもそんな遊びが形を変えて広まったのではないかなと。江戸時代は運河がたくさんあり、船は交通や運搬の主な手段でもあったので、ちょっとした娯楽にも使われるようになったのでしょうね」
「江戸末期から昭和初期までは、戦争もあって激動の時代だったので、娯楽の発展はあまりなかったようですし、戦後の高度経済成長期には河川の水質汚染が問題になったりもしたので、屋形船が今のような形で定着しはじめたのは、昭和の終わりのバブル期でした。屋形船の船宿はウチのように昔から代々続いているところが多いのですが、その前までは漁や釣り船の貸し出しなどをしてきたところがほとんどなんです」
高橋さんが小学生だった約40年前は、昔ながらの木造で屋根なしの船が主流だったそうです。そこから徐々に屋根をつけて一年中楽しめるようになったり、20人以上の乗船が可能な設備になっていったりと、屋形船は進化してきたそうです。
「バブル期になると屋形船を貸し切って宴会をする文化が広まっていき、船もどんどん大きく立派になってきて、今に至ります。当社ではこの貸切コースと、2名以上のお客様で気軽に楽しんでいただける乗合コースがあって、お客様のご都合に合った方を選んでいただけます」
そんな中であみ達として高橋さんが大事にしているのは「非日常」の演出だそう。
「屋形船に乗って水面から街の風景を眺めると、いつもとは逆になるじゃないですか。地上から川を見るんじゃなく、川の上から東京を見るっていうね。橋の下をくぐったりもしますし。そんな環境でお食事を楽しんでいただいたり、記念撮影をして『非日常』を思い出に残してもらったりするのが、屋形船の醍醐味だと思うんです」
屋形船に乗船するお客様のきっかけは様々。田舎から来た両親に東京観光をさせてあげたいといった場合や、同じ都内でも大きな川がない地域に住む人たちが江戸の文化を堪能しに来る場合など、やはり普段とは違った特別なひとときを求めてやってくる方がほとんどです。ハイシーズンの夏場は浴衣を着て夕涼みを楽しむ人々の姿も。
「それから、貸切の場合は一体感が生まれるのも屋形船ならでは。お店で集うときのように途中参加はできないですし、一度乗ったら港に戻るまで降りられない運命共同体のような雰囲気もありますし(笑)。貸切の場合は、ご要望によって様々な楽しみ方をしていただけるのも魅力ですね。企業研修や打ち上げなどに使っていただくことも多いです」
また、屋形船が通るルートには、東京スカイツリーやレインボーブリッジなど、東京の名所として人気のスポットもたくさん。水上からの景色を満喫できるように、あみ達の屋形船にはどれも屋上デッキが完備されています。
「“あみ達の”屋形船にまた乗りたい」と思ってもらうために
「いろいろな方とお会いした際に自己紹介をすると『屋形船、乗ったことあります』と話してくださる方も多いのですが、船宿の名前まで覚えている方はほとんどいないんです。貸切だと特に幹事さんが手配をしてくれて、他の方は乗るだけなので『屋形船に乗った』という思い出だけになりがち。でも、その中で『あみ達の船に乗った』と覚えていてもらい、また選んでもらえるように力を入れています」
あみ逹では、定員128名で東京湾最大として知られる「第十八あみ逹丸」や「大和」などを含めた大型の屋形船を8隻所有しています。
どれも最新鋭のシステムを搭載した屋形船であることは変わりないのですが、特に目を引くのは、こちらの「ピンクの屋形船」。
従来の船の形式やお食事メニューに縛られることなく、現代の若い世代も楽しめるような椅子・テーブル席スタイルの屋形船や、有名パティシエとコラボレーションしたスイーツや洋食メニューなど、モダンな提案も積極的にしています。
しかしここ数年は、コロナ禍の規制によって休業せざるをえない時期が続いたそう。
「毎年必ず同じ時期に利用してくださっていたリピーターさんも多い中、お電話をいただいてはやむなくお断りしなくてはいけない状況だったので、2022年はやっと光が見えてきました。楽しみに待っていてくださった方々にも、この機会に興味を持ってくださった方にも、思う存分満喫していただきたいですね」
高橋さんの言葉に、屋形船が行き来する川辺の風景が戻ってくる喜びを改めて感じました。
水辺がそばにあるこの街で、江戸の風流を現代らしく満喫
最後に、生まれも育ちも江戸川区の高橋さんに、街の魅力について伺うと「ならでは」のコメントが返ってきました。
「東京の東側は、23区の中では自然が多くてのどかな地域です。それから私たちの仕事は水がないと暮らしていけないのですが、地図をみるとこの辺は碁盤のように水路が整備されているのがわかるんです。いたるところに水門があったりもするし、河川敷も広いので、大都会の中を流れる目黒川や神田川よりも『水面が近い』という豊かさがありますよね」
人々にとっての憩いの場ともなっている水辺の風景は、たしかにこの街の大事な財産なのだと気付かされました。
この夏は、江戸の風流を感じながらも現代に馴染む、あみ逹屋形船を堪能してみませんか?
素敵なHello!が、今日もあなたに訪れますように。
(取材・執筆:山越栞)
住所 | 各乗船場を別途記載 |
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※本記事に掲載している情報は、2022年6月時点のものです。
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