錦糸町発!ハロー!イースト東京 この街のだいすきなところ、またひとつ

ものづくりに携わるすべての人を幸せに。地場産業の歴史を引き継いだ6代目が率いる革小物専門店

墨田区には、創業100年を越える歴史を持ったものづくり企業がいくつもあります。

その中で、時代と共に形を変えながら、地域とものづくりへの愛情を注いできたのが、今回訪れた東屋さんです。

川のほとりにある本社で、6代目の木戸麻貴さんにお話を伺いました。

会社の一角に、時代の変遷を伝える小さな博物館

東屋は、革小物の専門店として100年以上の歴史を持つ老舗。すぐそばを隅田川の支流である堅川が流れる両国のまちに本社があります。

どれくらい隅田川の近くかというと……?

窓の下には竪川。昔はこのあたりが隅田川の花火を打ち上げる場所だったそうです

この窓際の風景は、東屋の中2階にある「袋物博物館」からの眺めです。

ここでは、明治38年に「木戸商店」として創業以来受け継がれてきた数々のアイテムのほか、東日本ハンドバッグ工業組合が貯蔵してきた、江戸時代から大正時代にかけての貴重な袋物のコレクションを、一般の方々にも公開しています。

ビルの一室に設えられたこの空間は、墨田区が制定する「小さな博物館」の一つに認定されています

袋物の歴史を辿ることができる貴重な品々は東日本ハンドバッグ工業組合から預かっているもの

東屋が作っている製品の原料となる革に実際に触れることもできます。写真は子牛一頭分。

また、戦後に海外に輸出していた革製品など、木戸社長によって工房の片隅から再発見された自社のアイテムも必見です。

年季の入った革小物は3代目の時代に製造されていたもの

「私が小さい頃から工房によく出入りしていたので、箱に詰まって置いてあるものを『これなんだろう?』と思っていたんです。開けてみたら、昔作っていたものが出てきて、これって貴重な品なんじゃないかなって」

一つひとつ丁寧に説明してくださる木戸さん。博物館で知ることのできるものづくりの歴史は、脈々と続いてきた木戸家の歴史でもあります。

過去も未来も大切に想う6代目の使命

そもそも墨田区は、豚革を使ったものづくりが古くから盛んな土地。東屋の前身となる木戸商店も、そんなこの地を選んで創業されたといいます。

「墨田区は戦争のときに軍靴などを作っていたので、靴屋さんもすごく多かったから、そこから革小物やバッグの製作も盛んになったのかもしれないですね」

お話をしてくださった木戸社長の肩には、自社ブランドのミニバッグが

そんな場所で生まれ育った木戸さん。ご自身では家業を継ぐことをそこまで意識してはいなかったそうですが、幼稚園の卒園アルバムには将来の夢に「がまぐちや」と書いてあったとか。

こうして木戸商店から東屋へと名前を変えて6代まで続いているのは、木戸家の人々の熱意と家族の物語がありました。

「私の母が産まれて1週間の時に、祖父が戦争に呼ばれて、そのまま帰らぬ人となってしまったんです。それでも、妻にあたる祖母は会社をたたむことはしませんでした。その理由が、祖母が最近亡くなって、祖父からの古い手紙を見つけたときにやっとわかったんです。

そこには、『袋物業界が続く限りは続けててほしい、この業界に寄与してほしい』と書いてあったんです。だからこそ、祖母には続けようという強い意志があって、今につながっているんだと思います」

そんな家系に生まれた木戸さんは、東屋の娘として育ったお母様と、職人親方の息子として育ち東屋に修行に来ていたお父様の一人娘として、この街で育ちました。

「大人になるにつれて、職人と経営者両方の血を引き継いでいる私だからこそできることがあると思うようになったんです。もしかしたら私はその使命を果たすためにここに生まれたんじゃないかって」

そんな6代目の使命感のもと生まれたのが、「まるあ柄」を代名詞とした東屋のオリジナルブランドでした。

携わるすべての人が、楽しくて笑顔になるものづくりを

元々は、他社から発注を受けて製造するOEMの仕事しかしていなかった東屋ですが、現在は職人の技術を大事にしながらも、デザイン性にこだわった自社アイテム「made in RYOGOKU」を多数展開しています。

木戸さんが幼稚園のアルバムに書いたがまぐちも

この特徴的な水玉模様のような柄は、「まるあ柄」という東屋のオリジナルです。2014年に、創業100周年の記念手ぬぐいを作る際、隅田川のキラキラとした川面をイメージして作られたのがきっかけだそう。

現在はオリジナル商品だけでなく、地域の企業とのコラボレーションも積極的に行っています。以前取材に伺ったあみ達さんでは、まるあ柄の屋形船も。

「自社ブランドのコンセプトは“ものづくりに携わる全ての人が、楽しく、笑顔に。”です。

使う人だけでなく、職人さんなどの作り手もハッピーじゃないといけない。OEMをずっとしてきた中で悔しい経験もしているし、職人さんを尊重したい。

私が強く思っているのは、お付き合いしてくれる会社さん、材料屋さんも含めた全部の皆さんと良い関係で、みんなが『東屋と付き合いたいよね』と思ってもらえるような会社にしたいんです。」


本社の一階では、職人さんである木戸さんの叔父さんが作業している風景を見せていただきました

一人勝ちではなく、みんなで作ることで広がる強さ


親しみのあるお人柄が素敵な木戸さんでした

他のものづくり企業や地域の人々と一緒にさまざまな商品作りをしている東屋さん。そこには、木戸さんの「みんなで」進んでいきたいという強い想いを感じました。

「一人勝ちしても、一緒に祝って喜んでくれる人がいなくちゃ全然面白くないじゃないですか。だからみんなで上手くいったらいいんだろうなと思うんです。」

そんな東屋の本社は、袋物博物館だけでなく、3階がレンタルスペースとして誰でも利用可能です。これからは一階の駐車場スペースをカフェにする計画もあるそう。地域のハブとなるような場所として、両国の街に新たな風が吹きそうです。

墨田のものづくりの歴史と技術を大切にする老舗は、人を大切にする会社でもありました。

素敵なHello!が、今日もあなたに訪れますように。

(取材・執筆:山越栞)

東屋
住所墨田区両国1-1-7  Google mapで見る
営業時間9:00〜17:00 ※要予約
定休日土・日・祝日、GW、年末年始、夏季休業期間
TEL03-3631-6353
WEBhttps://azumaya.bz/
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※本記事に掲載している情報は、2022年7月時点のものです。

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