錦糸町発!ハロー!イースト東京 この街のだいすきなところ、またひとつ

食を通して人々が混ざり合う場所。蔵前のニューカルチャーを牽引してきたシエロ イ リオの12年

街のあちこちにセンス溢れるショップや飲食店が点在し、お散歩にもぴったりの台東区・蔵前。

今でこそ「東京のブルックリン」と呼ばれ、おしゃれスポットの一つとなっていますが、約10年前は閑散としたエリアだったそうです。

そんな場所が変化する大きなきっかけとなったのが、7階建てのビルを丸ごとリノベーションして生まれた食とアートの複合施設「MIRROR(ミラー)」の開業でした。

今回は、その中でも1階と3階にあたるカフェ&レストラン「Cielo y Rio(シエロ イ リオ)」を訪ねます。

蔵前の新たな文化形成を牽引してきた存在には、人と空間、景色とが掛け合わされた、唯一無二のエネルギーがありました。

天空と川。イースト東京ならではの贅沢な景色を生かして

そもそも蔵前が「東京のブルックリン」と呼ばれるようになったのは、大きな川が流れ、使われなくなった倉庫やビルなどがリノベーションされ、クリエイターや感度の高い人々が集まる雰囲気が、ニューヨークのブルックリンと似ていたからです。

しかし、MIRRORのプロジェクトが始まった2011年頃は、今ほどの空気感はなかったそう。

「ここで開業準備を進めている頃は、夜になると目の前の道に人がほとんど歩いていなくて。すぐ横の大通りには飲食店やコンビニエンスストアなどもあるのですが、道を一本入っただけで全然人通りが違うんだなということを目の当たりにしました」

そうお話ししてくださったのは、立ち上げの頃から12年間関わり続けている広報担当の福地さん。

MIRRORを運営する株式会社バルニバービの広報・福地恵理さん

では、なぜそんな場所をあえて選んだのでしょう?

「もともと東京の1号店を契約満了で出ていくこととなり、移転先をさがしていたのがきっかけでした。大阪に本社をもつバルニバービが東京に新たな拠点を作る際に、東側って結構面白い場所が多いんじゃないかという発見があったんです。東京というと渋谷や新宿といった西側をイメージするかもしれませんが、例えば山手線の駅名で御徒町や秋葉原など東側の地名に面白さを感じて、そこから“東側”で物件を探し始めました」


また、すぐ目の前を流れる隅田川も大きな決め手となったそうです。

窓から見える隅田川の景色

「川沿いの物件であれば目の前にビルが建つことはないですよね。なので水辺の景色を確保できます。川を眺めながら過ごすことってなかなか日常生活ではなかったりするので、とても贅沢だなと思います」


シエロ イ リオが人々に愛される理由の一つは、まさにこの景色。

壁一面が隅田川に向けてガラス張りになっているので、晴れた日は特に、太陽の光を反射してキラキラ光る川の水面や屋形船が行き来する情緒的な風景、そしてスカイツリーと、これだけでもご馳走のような空間なのです。

隅田川の向こうに見えるスカイツリー

そもそも「シエロ イ リオ」とは、スペイン語で「シエロ」が天空、「リオ」が川という意味。隅田川と東京スカイツリーを連想しながら「これからのイースト東京」をイメージして名付けられました。

それから約12年。シエロ イ リオは、単なる飲食店ではなく、地域のハブとしても受け入れられている、唯一無二の場所になっています。

「食」を理由に多種多様な人々が集まる不思議な空間

MIRRORのビルはこんな内訳になっています

閑静な下町エリアにこれだけの規模でお店ができるとなると、近隣の人たちからの注目度もかなり高かったのではないかと想像できます。

しかも、今のようにおしゃれなショップや飲食店がそれほど多くはなかった十数年前に、どのようにしてMIRRORは地域に馴染んでいったのでしょう?

「開業時は近所の方々へのご挨拶だけでなく、町内会にも参加し、お祭りではっぴを着てお神輿を担いだりもさせていただきました。それは『店を出す』というだけではなく、街のオアシスとして地域の方が集う場として地元の方に育てていってもらえるような店をつくりたい、という考えからです」

「そうしていくうちに、「お客様とスタッフ」という関係が少しずつ変わっていくんです。お店をハブにしてお客様同士がつながったり、いろんな年齢や職業の方が多様な使い方をしてくださるから、お店として多面的な魅力を持てるようになってきました」


シエロ イ リオの一日は、時間帯によってさまざまな顔に変化していきます。お昼の時間帯には近くの会社に勤める会社員の方たちがランチに連れ立って訪れたかと思うと、幼稚園へお迎えに来た親御さんたちの自転車がズラリとお店の前に並び、お子さん連れでの待ち合わせ場所になったり。

そして午後になると、6階のオフィスからバルニバービのスタッフさんたちがお茶をしながらミーティングをしに来たり、ノマドワーカーの人たちがゆったりと仕事をしながら過ごしていたり。

さらに夕方には、地元の町内会の70〜80代の素敵なおじいさまおばあさま方がワイン片手に アンティパストをつまみながら会議をしていることもあれば、夜にはカップルもファミリーも同じお皿を囲んで楽しんでいて……。

こんな風に、本当に多様な使い方を受け入れることができる懐の広さは、スタイリッシュでありながらも奇をてらわないメニュー構成にもあります。

日替わりランチ:鶏もも肉のプランチャー きのこクリームソース(1,100円)

平日限定のデザートセット:エンゼルフードケーキ バニラキャラメル(1,000円)

「短期的なトレンドを追うのではなく、多くの人に長く愛されるような空間やメニューを意識しています。最初に7階建てのビルでお店をやろうと考えた時に、まずはカフェをつくろうとなりました。ハレの日を祝うレストランであったり、仲間同士で集まるカフェミーティングなど人が集まる場所には食が絶対必要だよねと。ですので「食」を起点にしつつ、少しずつ需要を考えながらMIRRORも進化していきました。


例えばシエロ イ リオは22時でラストオーダーなのですが、それは住宅街にあるので、あまり夜遅くまでオープンしていると近隣にとっては賑やかすぎてしまう可能性があるからです。その代わりに、4階の卓球バーや7階のルーフトップバーをつくり、二軒目、三軒目使いしていただけるように構成しています」

卓球バー「RIVAYON(リバヨン)」

ルーフトップバー「Privado(プリバード)」

5階にはレンタル可能なパーティールームまで。パーティールーム「GOCAI(ゴカイ)」

まさに多様な楽しみ方ができるこのビルが、「蔵前が面白くなってきた」という人々からの評判を牽引してきたことは言うまでもありません。

開拓されながらも、ゆったりとした時間が流れ続ける街

最後に、福地さんに街の魅力について伺ってみました。

都心で生まれ育った福地さんは、MIRRORのプロジェクトに関わるようになってから、東側に引越して暮らしていた時期も長かったそうです。

「同じ東京でも『街』における人との距離感が違うなぁという感覚はあります。
“西側の東京”はトレンドの最先端がいつもあって、何でもそろっている“西側の東京”に不便を感じることもありませんでした。
ただそれと同時に選択するだけというか、モノがありふれて飽和状態でもあり、私にとって“西側の東京”は「効率的な町」という印象が強かったです

でも、シエロ イ リオが開業してこちらで暮らし始めてからは、道を歩いたら挨拶をしてくれたり、お店に『元気?』とお喋りに来てすぐに帰っちゃう人とかもいて(笑)。路地裏を歩いて探検するのも面白いですし、隅田川沿いって橋が何本もあるから、ランニングするのも楽しい。ところどころレトロな街並みもあり、どこかちょっと懐かしい感じがすぐに好きになりました。都心に比べて街に「余白」があり、時間の流れも穏やかで、人も街も早足ではない空気感がありますよね。

この10年で街の景色は変わってきているけれど、個人店なども増えてきて、“少しずつ”開拓されているのも素敵です」

ちょっとした記念日はもちろんのこと、ふらりと1人で立ち寄るのにも、誰かとごはんやティータイムに足を運ぶのにも、はたまたウェディングパーティーなどの特別なイベントにも。

食を通じてあらゆる目的を受け入れてくれる存在感抜群の空間は、地域に根差しながら、蔵前という場所の心地よさを教えてくれる場所でした。

天気の良い日は特に、窓辺の景色に癒されながら、心地よいひとときを過ごさせてもらえそうです。

素敵なHello!が、今日もあなたに訪れますように。

(取材・執筆:山越栞)

Riverside Cafe Cielo y Rio
住所東京都台東区蔵前2-15-5 MIRROR 1F  Google mapで見る
TEL050-3503-8121
WEBhttps://www.cieloyrio.com/
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etc. テルミナ店舗 

※本記事に掲載している情報は、2023年2月時点のものです。

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