錦糸町発!ハロー!イースト東京 この街のだいすきなところ、またひとつ
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  • 江東区古石場

下町から丹精込めて。深川ワイナリー東京の「コト創り」から生まれる個性豊かなワイン

「ワイナリー」と聞いて連想するのは、どんな場所ですか?

ブドウ畑があり、広大な大地と自然に恵まれたローカルな場所が頭に浮かんだ方も多いのではないでしょうか。

しかし、今回訪れた深川ワイナリー東京があるのは、なんと自転車で銀座まで配達に行けるほどの東京の街なかにあるんです。

「こんなところでどうやってワインを醸造しているんだろう?」

ドキドキしながら向かった先には、人情味溢れるワイン好きのお二人が待っていてくださいました。

醸造責任者の上野浩輔さんと、ソムリエの伊禮(いれい)沙由美さんにお話を伺います。

ブドウ本来の持つ酵母によって、じっくり自然発酵したワイン

深川ワイナリー東京の所在地を目指してやってきた私たちですが、到着したのはこんな場所。


イメージキャラクターの「ワインマン」がお出迎え

まるでイタリアンレストランのような佇まいに、「ワイナリーはどこにあるんだろう」とソワソワしながらドアを開けると……?

目に飛び込んできたのは、大きなステンレス製のタンクがずらりと並ぶ光景でした。


この中でワインが醸造されています

外観とのギャップにびっくり。聞けば、元々はシャッターがついた倉庫のままの風貌だったそうですが、醸造期間中に「ワインのいい香りが外まで流れてきますね」と近所の人から言われることもあったので、念のため二重扉を設置したのだとか。

明るい笑顔で出迎えてくださった醸造責任者の上野さんに、まずは深川ワイナリー東京のワイン作りについて教えてもらいました。


醸造責任者の上野浩輔さん。定期的に工場見学も行っているため、説明用のフリップも

上野さん「深川ワイナリー東京のワインは、国内の生産者と関係を築きながら、大事に育てられたブドウを主に使って醸造しています。やっぱり体の中に入るものなので、できるだけ添加物を加えないことも気をつけています。小さなワイナリーならではのブドウの個性を活かしたフレッシュなワイン作りをしています」

ここでワインの醸造に携わっているのは、上野さんお一人。品種だけでなく年によってもそれぞれに違った味と香りを持つブドウを見極めながら、ワインになるまで日々大切に向き合っているそうです。

とはいえ、農園から運ばれてきた大量のブドウをタンクに移すまでの作業は重労働。スタッフだけでは賄えないので、毎年公式SNSでボランティアを募集しています。

「募集は毎年行っているのですが、誰にも来てもらえなかったことは一度もないんです。いらっしゃるのは、料理人の方や、ブドウ好きのお子さんとやってくる親子連れの方までさまざまです。過去には、前の年に自分たちが仕込んだワインを結婚式の引き出物に使ってくださったカップルもいらっしゃいました」


ボランティアの皆さんとブドウの房から実を取り出している様子

このように、一般的なワイナリーにはない体験ができるのは、深川ワイナリー東京が「コト創りのワイン醸造所」を合言葉にしているから。他にも、お客様や生産者さんを巻き込んでワイン作りを楽しむイベントがあります。

お客様と一緒に農園ツアー

そんな背景から生まれていくワインは、ブドウが本来持っているワイン酵母が発酵するのを丁寧に観察しながら待って、飲み頃を迎えます。

上野さん「ちょうどもうすぐ瓶に詰め終わってしまうところだったので、いいタイミングでしたね」

今回は特別に、タンクから出来立てのワインを注いでくださいました。

タンクから直接注がれるワイン!とっても贅沢です

こちらのクリアな赤色が綺麗なワインは「イーストベイアッサンブラージュ レッド2022」と名前がついたもの。

単一品種で作られるのが主流のワインには珍しく、なんと5種類のブドウが絶妙なバランスで配合されているそう。頭に「イーストベイ」とつけられているのが、下町のワイナリーならではのこだわりです。

気になるお味は、ワイナリーの裏手に併設されている試飲カウンターでゆっくり説明を聞きながら楽しませてもらうことに。

試飲スペースで作り手の思いを聞きながらワインを吟味

正面のドアの脇にある通路を進むと、一般の方でも気軽にワインの試飲・購入ができる角打のようなスペースが。

ここでは、その時々で品揃えが変わるフレッシュなオリジナルワインを、プロの説明を聞きながら選ぶことができます。


ソムリエの資格を持つ伊禮(いれい)さんにも味の特徴を教えてもらいました

伊禮さん「これからの時期には、スッキリと飲んでいただけるスパークリングもおすすめです」

そう言ってまず出していただいたのは「山形県産ナイアガラスパークリング」。深川ワイナリー東京のスパークリングワインは、全て無ろ過・酸化防止剤無添加なのが特長です。

栓を抜いた瞬間に、瓶の底に沈んでいたブドウの果肉や皮、酵母などの成分が泡と一緒に全体に舞い上がり、注ぐと香りが広がるしくみ。瓶内二次発酵で「まるでブドウを食べているかのような」味わいを目指しているそうです。


イーストベイアッサンブラージュ レッド2022:2,640円(税込)

そして、こちらが先ほどタンクから注いでもらった「アッサンブラージュ」の赤ワインです。

ワイン通の料理人さんが試飲に来た際は、「ここは◯◯の香りがする」「後味には△△を感じる」などとブドウの品種の特徴で盛り上がっていたとか。他にはない個性のあるワイン創りをしている深川ワイナリーならではのエピソードです。


青森県産スチューベン 白:2,680円・赤:2,860円(税込)

上野さん「ウチのワインを置いてくださっている飲食店さんは、実は焼鳥屋さんやうなぎ屋さんなどの和食のお店も多いんです。フレッシュな製法ならではの酸味や、無ろ過の旨みが和の食材とも合うみたいで。また下町という土地柄、近所で長く続いているお蕎麦屋さんなどにもあるんですよ。面白いでしょ」

ワインといえばイタリアンやフレンチなど洋食のイメージが強いですが、さすが下町生まれのワインたち。しっかりとその風土に馴染みながら、地域の方々にも愛されているのですね。

地域との共同プロジェクトも。下町の愛されワインを食卓に

地域との取り組みとして、もう一つご紹介したいのが、2018年から深川ワイナリー東京が東京海洋大学と共同で進めているプロジェクトです。

なんと東京湾に半年間ワインを沈めて、ワインを海中熟成させるというもの。これによって、通常の熟成方法に比べて味わいに変化があるのかを検証しているそうです。

伊禮さん「引き上げて飲み比べてみたら全然味が違っていて。これを『江戸前ワイン』として、深川の活性化につながるような新名物にできたらいいなと思っています」


美味しくて体にも嬉しいナチュラルなワイン作りのほか、人と人との温かな関わり合いや、地域との共同プロジェクトも大事にしている深川ワイナリー東京。

実は他にも、最寄の門前仲町駅からすぐのビルの屋上でブドウを栽培し「深川産のワイン」作りに挑戦しています。

赤札堂深川店の屋上に広がるブドウ園

さらに、地域のイベントごとにも出店し、お客様に直接ワインを売ることも積極的に行っているそうです。

上野さん「イベントが多い時期はスタッフがあちこちの会場を分担して、ヘトヘトになってしまうこともあるんですけどね(笑)。それでも、やっぱり自分たちが作ったものに直接興味を持ってもらえるのって嬉しいじゃないですか」

作り手側から直にワインを買うことができたら、お家でワインを注ぐ瞬間の幸せも、飲んだときに感じる美味しさも倍増しそうです。

知れば知るほど、なんだか応援したくなる深川ワイナリー東京。下町生まれの美味しいワインを、まずは食卓に一本いかがでしょうか?

素敵なHello!が、今日もあなたに訪れますように。

(取材・執筆:山越栞)

深川ワイナリー東京
住所東京都江東区古石場1-4-10高畠ビル1F  Google mapで見る
営業時間醸造所見学:毎週日曜 14:00〜、16:00〜 定員各6名
TEL03-5809-8058
WEBhttps://www.fukagawine.tokyo/
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※本記事に掲載している情報は、2023年4月時点のものです。

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