つるんとさっぱり、味わい深い。蕎麦のように香る「きわだち」のひやむぎ
夏になると食べたくなる冷たい麺。そうめんや中華麺、うどん、蕎麦などはたやすく頭に浮かびますが、「ひやむぎ」という選択はいかがでしょうか?
日本でもほとんど存在しない貴重なひやむぎ専門店「きわだち」は、夏場はもちろん冬でも行列ができる人気店。
麺類のなかでもスポットライトが当たる機会が少ないひやむぎですが、「きわだち」に一度足を運ぶと、多くの人がその虜になってしまうそう。
そこには、どんなこだわりがつまっているのでしょうか?
お店のカウンター越しに、店主の永井さんが語ってくださいました。
「ひやむぎってこんなに美味しいの?」感動のひとすすりを
錦糸町駅から徒歩10分、東京スカイツリーから徒歩15分の地に「きわだち」のお店はあります。
暖簾をくぐると、そこには6席ほどのカウンターテーブル。ピカピカのオープンキッチンとシンプルな店内は、こだわりの一皿と向き合うのにぴったりの空間です。
店主の永井さんにあれこれ伺いたいことはありつつも、まずはひやむぎをいただかない訳にはいきません!
注文すると、手打ち麺機で作った生麺を、大きな茹で釜で茹でる永井さんの姿を間近で見ることができます。
お蕎麦屋さんのようでも、ラーメン屋さんのようでもあるこの風景。なんだか新感覚で、どんどん楽しみな気分が増していきます。
「どうぞ」と、カウンターの向こうから出してもらったのは、初めての方にはまずこれを食べて欲しいという定番商品のこちら。
ツヤツヤの麺は、2通りの食感が楽しめる細麺と平打ち麺です。まずはつゆをつけずに、そのままのひやむぎを味わうのがおすすめだそう。
ひとすすりすると、まるで上質なお蕎麦を食べたときのように、香りと味わいが口のなかに広がります。
麺は群馬県産の小麦粉と香川県産の全粒粉を独自にブレンドし、みずみずしいのどごしとしっかりとしたコシを併せ持つ製法にこだわっているそう。
つゆは、透き通った関西風の上品な味わい。お好みでつけあわせの柚子胡椒や生姜、ネギをプラスしたら、また違った美味しさを楽しむことができます。
また、ひやむぎ以外に一品メニューが豊富なのも見逃せません。永井さんセレクトの日本酒などお酒類も揃っているので、お酒をいただきながら〆にひやむぎなんてツウなひとときを過ごすのもよさそう。
いざお店に足を運ぶと感動しっぱなしですが、そもそも「ひやむぎ」のことをあまりよく知らない人も多いはず。それに、なぜ永井さんは「ひやむぎ専門店」を始めようと思ったのでしょう?
お蕎麦屋さんでの修行で出逢った「生ひやむぎ」の衝撃
実は、永井さんのご実家はお蕎麦屋さん。もともと家業を継ぐ予定はなく、大学卒業後は一般企業に就職したそうです。
「でも、なんだかサラリーマンは性に合わなくて(笑)。そこで、実家ではないお蕎麦屋さんで、まずは下積み修行をしようと思ったんです。さらに運良く採用してもらった店が、蕎麦以外にも自家製のひやむぎを出していて。その美味しさに衝撃を受けたのが『きわだち』を始めるきっかけになりました」
まさに「きわだった」その美味しさに感銘を受けた永井さんは、そのときの衝撃をそのまま「きわだち」という店名にしたんだとか。
とはいえ、世間一般では認知度が高いとはいえない「ひやむぎ」。それでも、オープンして一年たらずで行列のできるお店となったそうです。
シンプルな食べ方以外にも、季節によって変わるメニューも大人気。お蕎麦屋さんというバックグラウンドから生まれる一皿に、遠方から訪れるファンも少なくありません。
「お店にいらっしゃった方には、『そうめんとひやむぎってどう違うの?』とすごくたくさん聞かれるんです。似ていますが、そうめんは『手延べ』という独自の製法によって作られたもので、ひやむぎはお蕎麦と同じように生地を切って麺の形にする『切り麦』からきています。本来は温かいものは『あつむぎ』、冷たいものは『ひやむぎ』だったのですが、だんだんと『ひやむぎ』だけが呼び名として残ったようです」
ご自身がその美味しさに感動し、お店をはじめようと思ったからこそ、永井さんはひやむぎの魅力をより多くの人に知ってもらおうと、図書館に足を運んで麺の歴史を学んだそう。
ひやむぎへの熱い情熱と、専門店としてのプライドが感じられるエピソードです。
明るく気さくにお話しをしてくれる永井さん。お客さんとのやりとりを通して、限定メニューを定番化させたり、市販のひやむぎと「きわだち」のひやむぎとの食べ比べできるサービスをしたりと、常に試行錯誤しているとのこと。
ひやむぎの美味しさをお客さんに知ってもらいたいという思いの強さを感じました。
下町ならではの気さくな雰囲気で、ひやむぎをより多くの人に
ご実家のお蕎麦屋さんは亀戸にあり、「きわだち」のお店は錦糸町と押上の間。ご自宅もこの近辺だという永井さん。下町に生まれ、現在も下町に店を構える中で感じているのは、お店同士のご近所付き合いのあたたかさだそう。
「このあたりは最近飲食店が増えてきているのですが、お互いにあいさつを交わしたりと、親しいやりとりができているなと感じます。この前なんて、ウチのお店の近くで窓ガラスが割れたことがあったんですが、近隣の人たちが『大丈夫??』って駆けつけてきてくれて(笑)。そういう顔の見える関係性が下町らしいですよね」
お話を伺いながら、永井さんのこの気さくな雰囲気も、そういった下町ならではの環境から生まれた魅力なのかな?なんて思いました。
最後に、これからの「きわだち」が目指していることについてもお話ししてもらいました。
「数少ないひやむぎ専門店を営んでいる以上、自分の使命は美味しいひやむぎの魅力をより多くの人に伝えることだと思っています。でも、店舗数を増やすとどうしても品質の担保が難しくなってしまうなと。なので、今後はご自宅でも楽しんでもらえるように、オンライン販売やお持ち帰りセットの数を増やしていきたいと思っています」
「きわだち」のひやむぎを食べてから、スーパーの店頭でもひやむぎに目がいくようになった気がします。なるほどこれは「きわだち」の魔法にかかったのかもしれないなと、あの美味しさを思い出すのでした。
香り高く、のどごしツルツルな「きわだち」のひやむぎは、食欲のない真夏にもぴったり。ぜひ足を運んで、感動を味わってみてください。
素敵なHello!が、今日もあなたに訪れますように。
(取材・執筆:山越栞)
住所 | 東京都墨田区太平1−22−1 ソラナ錦糸町102 Google mapで見る |
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営業時間 | 12:00~15:00 18:30~21:00 (L.O.30分前 / 木・金はランチのみ) |
定休日 | 火・水曜 |
TEL | 070-8385-6913 |
WEB | https://kiwadachi.com/ |
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※本記事に掲載している情報は、2023年5月時点のものです。
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