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香りを装う「ALMA(アルーマ)」。石井精工の技術が生んだ新プロダクト

上品なアロマの香りを“装う”。

そんなオリジナリティのあるファッションアイテムが、創業60年を越える金型工場の石井精工とセメントプロデュースデザインのタッグによって誕生しました。

技術力を持つ老舗の工場が、独自ブランド「ALMA(アルーマ)」の開発により得たものとは?

活気を感じる葛飾工場で、3代目の石井洋平さんにお話を伺います。

シーン別のアロマをこっそり忍ばせて。自分を癒すファッションアイテム

開発秘話の前に、まずは「ALMA」そのものの魅力をご紹介。

そもそも「ALMA」というブランド名は、素材である「アルミ」と、「アロマ」を掛け合わせた造語であり、ロゴはドリルとアロマが香っている様子から想起されてできたものだそうです。


2016年に発売した第一弾「ALMA Aroma Pins」シリーズ
3種類のモチーフが抜かれた「ALMA Aroma Pins ~Motif~」シリーズ

淡いカラーリングにまずは目を引かれますが、これは「アルマイト染色」という、アルミの表面に傷をつきにくくする加工技術によるもの。専門の業者に直接お願いして、高級感のある色味と質感を特別に作ってもらったそうです。

ALMAの楽しみ方はどれもシンプル。まずは、ネジ式に加工された本体をくるくると緩めて上蓋を外します。

そして付属のコットンにお好きなアロマオイルを2〜3滴。

再び蓋をしっかりと閉めればOK!あとはお好きな場所に身につけるだけ。

ピンバッジのように洋服につけても、バッグや帽子などお手持ちのアイテムにつけても素敵です。


身に着けた場所からほんのりとアロマが香ります

また、肌が敏感でフレグランスがつけられない方や、香水の匂いが苦手な方にもおすすめ。お食事の場面など、TPOによって香りを控えたいときはすぐに取り外せるのも嬉しいですね。

さらに、ALMAのためだけに独自にブレンドしてもらったオリジナルアロマオイルのバリエーションにも注目です。


左から「Protect」「Smart」「Respect」「Switch」「Classy」

シーンごとの香りで癒してくれるアロマオイル。ALMAで一緒にお出かけすれば、さりげなくアロマテラピーを受けているような気分になりそうです。中に入っているコットンを付け替えれば、例えば午前から午後の気分の移り変わりに合わせて、別の香りを楽しむことも可能です。

さらに最近では、バイカラーと表面に刻まれた模様が美しい「ALMA Aroma Pierce」も仲間入り。イヤリング派でも、市販されている「イヤリングコンバーター」というパーツを使うことで使用することもできるそうです。

※パーツを使用する際は、針先が繊細なので針曲がりには充分にご注意ください。


023年の7月に新しく加わった「ALMA Aroma Pierce」シリーズ

アロマオイルと併せて、ギフトにも喜ばれそうなALMAのアイテムですが、なんと最近では、心身のコントロールが求められるプロスポーツの現場でも一役買っており、カーリングで男女ともに日本代表候補に上がっているSC軽井沢クラブでも使用されているそうです。


職人たちが技を語れるアイテムを作ることで、ものづくりの可能性を拓く

発売から数年が経ち、今では石井精工を語る上でなくてはならない存在になっているALMAシリーズ。

しかしその裏側には、とある課題意識がありました。


お話を伺った石井さんご兄妹

「石井精工は、ゴム成形用の金型を50年以上も作り続けてきました。一般の方々にはなかなか想像しづらいかもしれませんが、例えばデジタル機器のボタン部分やカメラのグリップ、スマホケースなど、ゴムでできているものはだいたいゴム成形用の金型によるものです。特に多いのが自動車部品で、ウチも自動車業界の大手企業さんからの依頼がメインとなっています」

そう話してくださったのは、3代目として現場の指揮をとる石井洋平さん。


工場内には大型の機械がたくさん!

工場が立ち並ぶ近隣のなかでもひときわ広い敷地に、何台もの専用機械と、十数人の職人さんたち。大企業の部品用金型を多く制作していることもあり、会社としては安泰のように思えますが……?


「先ほども話したように、僕らが作っているのは『一般の方々には認識されにくい商品』です。だからこそ、表に向けて石井精工の技術は見えにくく、若手の職人が育つにはモチベーションになりにくい側面もありました。何より、自社の技術の幅を広げるためにも、オリジナルのアイテムを作って販売する必要があるなと思ったんです」

とはいえ、自社プロダクトの開発は一筋縄では行きませんでした。

セレクトショップなどで素敵だなと思った商品のデザイン会社にダメ元で電話をかけては、断られてしまう日々。そんな中で唯一取り合ってくれた人に教えてもらったのがきっかけで、墨田区の「ものづくりコラボレーション」にたどり着きます。そこで出逢ったのが、ALMAのデザインを手がけたセメントプロデュースデザインさんでした。

「もともとセメントさんの方でALMAの原型となるアイデアはあったそうですが、実際には形にできていなかったと。そこで一緒に話し合いながら、アルミを削り出してボタン型にするデザインが生まれました。香水ではなくアロマオイルにこだわったのは、自分自身が香水をあまり使わなかったことと、より幅広い人に使ってもらいたかったからです」


アルミのかたまりから削り出し、継ぎはぎなしでALMAの形が生まれます

ちょうど開発当時、旋盤加工※が必要な発注があって専用の機械を導入したにもかかわらず、その仕事が中止になってしまっていたのだそう。そこで「せっかくなら」とこれを使った商品開発がスタートしました。

※旋盤加工…材料を回転させながら工具に当て、削りや穴あけ、切断などを行う加工のこと

「普段は協力会社さんに旋盤加工を頼んでいるのですが、ALMAのピン部分を細長く削り出してほしいとお願いしたら、そんなことは不可能だと言われてしまって。でも、懲りずに試行錯誤しながら自分たちでやってみたら実現できたんです。社内の熟練の職人も、当時まだ入社して数年の20代の僕の話を聞き入れて、一緒に開発をしてくれて。もちろん金型の技術も生かされているのですが、こういった新しい加工にチャレンジできたことも、会社としては大きかったですね」


削り出したアルミに、モチーフ型の穴を抜くための金型

ALMAの完成をきっかけに、石井精工のこれまでの仕事にはなかった、直接消費者の方に商品を届ける機会が増えていきました。

「店頭に立ってお客様とお話ししながらALMAを手にとってもらえるのはやっぱり嬉しいですね」

そう話すのは、ALMAの広報も担当している石井彩菜さん。


またALMAの発売当初は、普段工場から出ない職人さんたちも交代で店頭に立ち、接客をしてもらったのだそう。興味を抱いてくれているお客様と直接コミュニケーションを取ることで、加工技術について伝えながら、やりがいにもつながっていったそうです。

企業の根底に息づく、スタイリッシュと心地よさへのこだわり

石井精工さんの社内や工場を案内してもらったときに印象的だったのは、どの職人さんもいきいきとして元気に挨拶をしてくださったこと。

「ISHII SEIKOU」のロゴが入ったお揃いのボタンダウンシャツもみなさんお似合いで、それぞれの仕事にプライドとやりがいを持っているように感じました。


ラウンジルームに刻まれたロゴマーク

インテリアやドリンクにもこだわったラウンジルームは、従業員の皆さんが休憩するための場所。別のスペースにはリフレッシュ用のトレーニングマシンまであり、働く環境を心地よいものに整えている石井さんの心意気を感じました。

スタイリッシュさと心地よさ。ALMAシリーズに込められたこれらの魅力は、間違いなく、石井精工の根底にあるスピリットを引き継いだものでした。

あなただったら、どんな風に香りを“装い”ますか?

素敵なHello!が、今日もあなたに訪れますように。

(取材・執筆:山越栞  撮影:花田友歌)

石井精工/ALMA
住所東京都葛飾区堀切1-33-9  Google mapで見る
TEL03-3694-7100
WEBhttps://alma-product.com
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※本記事に掲載している情報は、2023年11月時点のものです。

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