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  • 墨田区亀沢

伝統を守り、新しさを臆せず取り入れる老舗。東あられ本鋪の米菓たち

日本人にとっては当たり前のように身近にあるおせんべいやおかきにあられ。古くから愛されてきた米菓ですが、その「おいしさ」をじんわりと感じたことはありますか?

今回訪れたのは、明治43年創業、両国の地で老舗米菓店として続く「東あられ本鋪
」です。

伝統あるおいしさを守りながらも、おかきの新たな可能性を常に切り拓いてきた歴史と、現在に引き継がれた想いとは?

5代目代表取締役社長の小林さんに伺います。


※せんべい、あられ、おかきの違い…原材料に餅米を使用したものがあられとおかき。その中でも粒の細かいものをあられという。せんべいはうるち米を使用したもの。

約30年前、米菓の“あたりまえ”を覆した「東一福」

両国駅から歩いてすぐ、北斎通りに面した場所に建つ、東あられ本鋪
の本店。明治43年の創業以来、東京下町のこの場所に根付き、永く愛されてきました。


東あられ本鋪の本店。かつてはここの2、3階で米菓を製造していたそう

今回お話を伺った小林さんは、創業者のひいお爺様から代々店を受け継ぎ、5代目として東あられ本鋪を率いています。


五代目の小林宏太郎さん

「ウチは昔から、『不易流行』と『温故知新』という言葉を掲げてきました。流行り廃りに左右されず、今お客様が求めているものを作りながら、昔のいいところはしっかり継承していこう。そういった意思の表れです。
あくまでも『古いから良い』ということではないので、老舗だからこそどんどん新しいことに挑戦していき、『老舗は常に新しい』という考え方を大事にしてきました」

実は、東あられ本鋪のように、製造元が直接米菓を販売しているお店は多くはないそうです。ほとんどの製造元が卸し専門のケースが多い中、小林さんのお爺さんである二代目が戦後にお店を再建してからは、炭火の手焼きせんべいを販売して人気を集めていました。

その後、東あられ本鋪にとっても、米菓の業界にとっても、一つの転機が訪れます。

「当時からウチも百貨店さんに贈答用の商品として卸し販売をさせていただいていたのですが、そのご縁で全日空さんから『プレミアムシートの機内食に出せるお茶菓子を開発してくれないか』とお声がかかったんです。そうして生まれたのが、『東一福(あずまいっぷく)』という商品でした」


一包で7種類の味が楽しめる『東一福』476円(税込)

7種類のバリエーションは、「海苔おかき」「ザラメおかき」「胡麻おかき」「昆布おかき」「海老丸」「桜青のり」「一福揚げ醤油」。それぞれの味のバランスは絶妙に計算し尽くされていて。誕生から30年以上経っても変えることができないといいます。

ところで、今ではよく見るようになったこのタイプの小分け包装ですが、東あられ本鋪ではかなり初期にこの製法をはじめたそう。もちろん、作るのにも袋に詰めるのにもかなり手間がかかるのはいうまでもありません。


店頭にも「東一福」のコーナーが

それでも、この『東一福』は瞬く間に大人気商品となり、東あられ本鋪を代表する新たな商品となりました。

一方で、手作りのおいしさも変わらず大事にしているそう。炭火手焼きに代わり、現在店頭では手揚げおかきを買うことができます。


揚げたてのおかきを店頭で

これぞ「不易流行」と「温故知新」を大事にする老舗の精神ですね。

米からこだわるおいしさのベースに、お客様を喜ばせる豊かな発想力

東あられ本鋪が100年以上も愛されてきた理由には、もちろん美味しさへのこだわりがあります。主原料となる餅米の多くは、山形県の中山町にある契約農家さんが、東あられ本鋪のためだけに作っている減農薬・減肥料の特別栽培米。


「お米の質で米菓の味もすごく変わるんです。お願いしている農家さんのお米は『お米ってこんなに甘くて味があるの?』と感動するくらいのもの。それを、長年の技術と知識で蒸してお餅にし、最大限の美味しさを引き出します。毎年年末にのし餅を販売しているのですが、おかげさまで召し上がった方には『もうここのじゃないと食べられないわ』と言っていただいています」

【手揚げおかき製造の様子】

おいしさにこだわる一方で、お客様に喜んでもらうための工夫にも抜かりがありません。東あられ本鋪の本店にいらっしゃるのは、約6割が贈答用の品を選ぶことが目的のお客様だそう。

そこで、墨田区ゆかりの絵師、葛飾北斎の絵柄をモチーフにした商品にも力を入れています。


パッケージに葛飾北斎の絵柄がプリントされた「北斎揚げ」411円(税込)
葛飾北斎の袋と、中のおかきにも同じ絵柄がプリントされている「北斎一福巾着袋」1,367円(税込)

手土産や贈り物に選ぶ際に、「その土地らしいものを選びたい」というお客様のニーズを理解しているのもさすがです。

またニーズといえば、東あられ本鋪では約20年前から、いわゆる「変わり種」のせんべいも販売してきました。ペペロンチーノ、パクチー、ゴーダチーズなどなど、「これっておかきなの?」と驚くようなものもありますが、主原料がお米なので相性もよく、お茶請けだけでなくおつまみとしても人気なんだとか。

「おせんべいやあられは老若男女に召し上がっていただけるものですし、食べ物アレルギーになる原材料も少なく、苦手な人も少ない。意外とオールマイティーな食べ物なんです」

いっとき、人気雑誌のモデルさんが「最近ハマっているもの」として誌面で紹介したことで注目を集めたこともあるそう。まさに老若男女に愛される、米菓店です。

米菓の魅力をもっと楽しんでほしい。よりおいしく、栄養のある米菓をこの街から

「私は、米菓の可能性を強く信じています。もっと楽しんでもらえるし、もっと魅力を感じてもらえるはず。そこで2023年に新しく『釜処 桝恵美(かまどころ ますえみ)』というブランドを作りました」


創業者の小林桝恵美氏の名前にちなんだ『釜処 桝恵美』
桝恵美のおかき 「繋ぐ」15袋入 1,242円(税込)

「創業者である曽祖父の名前を掲げ、米菓の業界では初の『金芽米』という精米方法を採用し、一般的な米菓よりも栄養価が高く、美味しさにもこだわったシリーズです」

この「釜処 桝恵美」シリーズのコンセプトは「つなぐ、つむぐ」。

代々伝統を引き継ぎながら、臆せずに新しいものを取り入れてきた東あられ本鋪が、生産者と作り手、そして消費者をつなぐために生み出した極上の米菓です。


「釜処 桝恵美」のコンセプト

この街で米菓を作り、お客様と向き合い続けて約一世紀。そんな由緒ある家業を継ぎ、この街で生まれ育った小林さんに、その魅力についても最後に伺いました。

「墨田区は、最近は若い人もたくさん越してきたり、子育て中のファミリー層も増えてきた一方で、昔からここに住んでいる方々もお元気で。そのバランスがとてもいいし、他にはない魅力なんじゃないかと思います。そんな街にある、通いたくなるお店をこれからも目指していきたいですね」

洗練された美味しさに、誰もが手に取りたくなる親しみやすさ。そして、思わず大切な人へ贈りたくなるストーリー性。

その全てに、これまで丁寧に物事を積み重ねてきた老舗の本質がありました。東あられ本鋪ではオンラインでの販売も行っていますが、ぜひ一度、店頭にも足を運んでみませんか?

素敵なHello!が、今日もあなたに訪れますように。

(取材・執筆:山越栞  撮影:花田友歌)

東あられ本鋪 両国本店
住所東京都墨田区亀沢2-15-10  Google mapで見る
営業時間平日 9:00~18:00
土曜・日曜・祝日 10:00~18:00
定休日毎月第3月曜日
年始三が日
TEL03-3624-9733
WEBhttps://www.azuma-arare.co.jp/index.html
SNS InstagramXfacebook
etc. Get!East Tokyo 

※本記事に掲載している情報は、2023年12月時点のものです。

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