錦糸町発!ハロー!イースト東京 この街のだいすきなところ、またひとつ

地域とつながり、地球にやさしい社交場へ「すみだ珈琲」の新たな旅路

江戸切子のカップで飲む、一杯の珈琲。

墨田区ならではのコーヒーシーンを生んだ「すみだ珈琲」は、日常の社交場になるような場所をつくりたい、という想いから始まりました。

お店を代表するすみだブレンドは、2012年にすみだモダン(墨田区による地域ブランディング事業)にも認証されています。同業者と協力しながら、これまでに地域のイベントにも積極的に参加してきたすみだ珈琲。現在は、コーヒーかすのアップサイクルに取り組むなど、その活動範囲はさらなる広がりを見せています。

気持ち良い冬の日差しが差し込む店内で、店主の廣田英朗さんにお話を伺いました。

お店をはじめるきっかけは、一杯の衝撃的なコーヒーとの出会い。

錦糸町駅北口から、錦糸公園の中を抜けて蔵前橋通りに向かって歩くこと約10分。駅前のにぎわいから少し離れた場所に、すみだ珈琲のお店があります。

古民家風の佇まいに、ガラス戸越しに見える暖かな照明の光と、ウッドベースの落ち着いた雰囲気。思わず「ちょっとここで休憩していこう」と、足が止まります。


木のぬくもりを感じられる店内には、珈琲の香りやスイーツの甘い匂いがふわりと漂い、自然と気分が和らいでいきます。

カウンター席を含めて、10席だけの小さな空間。だからこそ、「できるだけ広く見えるように、天板を抜いて天井を高くしました」と廣田さん。じつは、この建物は元々、草履を作る職人さんたちが働く作業場だったのだそう。


温かみを感じる店内は、かつて職人さんたちがものづくりを行う空間でした。

サラリーマン時代は、飲食事業の立ち上げに関わっていた廣田さん。当時は自らの足で食材を探すため、数多くのお店を訪ね歩く日々。この頃から、いつかは自分のお店を持ちたいと意識していたのだとか。そんな中、たまたま入った珈琲店で飲んだ一杯の珈琲が、その後の廣田さんの未来を決めるきっかけに。

廣田さん:「カフェや喫茶店は仕事の打ち合わせでよく使っていましたが、それまで珈琲をきちんと味わうことがなく、とりあえず頼んでおく、という感じでした。ところが、その時に飲んだ珈琲がとても美味しくて衝撃的で……まるで桃のジュースのような珈琲で、今までに味わったことのない一杯でした。そんな珈琲を紹介できるようなお店をつくりたいと思ったのもこの時です」


自分のお店を持ちたいという想いは前々からあったけれど、珈琲屋にしようと決意したのは、この衝撃的な珈琲との出会いが決め手になったそう。

「人が集い、みんながゆっくりできる場所をつくりたい」

その後、衝撃の一杯を提供していたお店に弟子入りし、約2年間の修行期間を経て2010年12月22日に、現在の場所にすみだ珈琲を開業。「すごく寒い日で、雪もちらほら降っていました」と、廣田さんは当時を振り返ります。

お店をはじめた頃から、一人で暮らしている方や、高齢者の方がほっとできるような場所になってほしいと考えてきた廣田さん。そこに若い人たちも来て、お互いに情報交換できるような場になれば、とも思っていたところ、最近では某アニメ作品の「聖地巡礼地」として、密かな人気を集めているのだとか。老若男女、地元の方から観光客までやってくる店内は、誰にとっても心地良い空間になっています。

お店の珈琲についてお伺いすると、「珈琲の味わい(甘味や酸味、焙煎の苦味など)がしっかりと感じられるようなものを提供しています」と廣田さん。お店の2階に設置した焙煎機で自家焙煎した豆を使い、一杯一杯丁寧に淹れられた、とっておきのスペシャルティコーヒーがいただけます。ちなみに、カウンター席は、珈琲を淹れる様子が間近に見られる特等席。


メインのすみだブレンドは浅煎り、やや深煎り、深煎りの3種類からお好みで選べます。

この日いただいたのは、すみだブレンドの深煎り。しっかりとした味わいのあとに、ほのかな甘みが残る印象的な一杯です。


すみだブレンド550円

すみだ珈琲のスイーツは、どれも甘さ控えめで珈琲に合うものを意識しているとのこと。

廣田さん:「常連客の方が偶然にもアメリカ菓子の研究をされていた方で、そのご縁をきっかけに、お客さまにレシピを教わったお菓子もいくつか定番として提供しているんです」

珈琲を使ったモカチーズケーキは、一口一口が濃厚な味わい。一方、コーヒーソースのかかったコーヒーソフトクリーム&ゼリーはさっぱりとした口当たり。それぞれ、珈琲の苦味や爽やかさを楽しめる一品です。


コーヒーソフトクリーム&ゼリー650円

地元産業に触れる機会から、アップサイクルの取り組みまで

すみだ珈琲の象徴的なシーンといえば、江戸切子のコーヒーカップでいただく珈琲。

じつは、廣田さんのご実家は、墨田区の歴史ある硝子メーカー「廣田硝子」を営んでいます。

お店の場所を探しているうちに、墨田区にたどり着いた廣田さん。

その際、「息子が近所でお店を開くなら、何か一緒にできることはないか」とお父様からご提案があり、熱い飲み物を入れても割れない江戸切子のコーヒーカップが生まれました。地元の職人さんによる美しいカットが施されたコーヒーカップは、眺めているだけでも惚れ惚れします。


廣田さん:「地元産業である江戸切子に身近に触れられる機会として、少しでも地域貢献になれば」

さらに、すみだ珈琲では、珈琲を通じて地域活性化を促す取り組みもしています。

2015年には、墨田区の声かけを機にすみだモダンの認証を受けた同業者が集まり、定期的なイベント開催や話し合いの場を設ける「すみだ自家焙煎珈琲店連絡会」(通称:すみ珈連)を結成。

すみ珈連の加盟店をはじめとした区内の珈琲店や、スイーツ・パンのお店が一堂に会する『SUMIDA COFFEE & SWEETS FESTIVAL』は、隅田公園のそよ風広場を会場に、昨年より開催されています。他にも、区内の商業施設で限定販売を行ったりと、活動の場を広げてきたすみだ珈琲。


COFFEE BAG(8g×5袋)1,296円、COFFEE LIQUID(720ml)1,620円, COFFEE SAUCE(200ml)1,944円

店頭で販売している「THE COFFEE HOUSE」のコーヒーバッグは、墨田区の「ものづくりコラボレーション」事業で共同開発を行って生まれたもの。

廣田さん:「どんな味わいのコーヒーが自分の好みに合っているのか、手軽に知るきっかけになればと、色々な産地の珈琲を詰め合わせて味比べできるようにしました。世界中の産地を巡るようなイメージで楽しんでもらえたら」

近年はSDGs(持続可能な開発目標)を意識した取り組みとして、使用済みのコーヒーの粉を肥料としてアップサイクルする活動をスタート。昨年秋には、廣田さんの呼びかけに賛同した事業者と共に企画したイベント『すみだコーヒーかすアップサイクルプロジェクト『Sumida Coffee Festival 2023 Autumn』が、錦糸公園のふれあい広場にて開催されました。

コーヒーかすを新たな資源として活用し、コーヒーを最後まで無駄にせず、有機質肥料へとう生まれ変わらせる活動は、2022年にすみだモダンブルーパートナーに認定されています。

「今後は区内の学校や公園、福祉団体や家庭菜園でも使っていただけるようにしたい」と、廣田さんは意気込みます。


有機質肥料で育てられたゴーヤの緑のカーテン

一杯の珈琲から、これまで地域とのつながりを広げてきたすみだ珈琲。

廣田さんの想いは、今もこれからも変わらず、世界中の美味しい珈琲を紹介しつつ、気軽に心地よく過ごせる社交場であり続けること。


江戸切子でいただく珈琲が、このまちとの距離を縮めてくれるかもしれません。

素敵なHello!が、今日もあなたに訪れますように。

(取材・執筆:田中未来  撮影:花田友歌)

すみだ珈琲
住所東京都墨田区太平4-7-11  Google mapで見る
営業時間11:00~19:00
定休日土、日、祝
TEL03-5637-7783
WEBhttp://sumidacoffee.jp
SNS Instagramfacebook
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※本記事に掲載している情報は、2024年1月時点のものです。

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