コーヒーの神様に導かれて。SAMUEL ROASTERSで、純粋に美味しいと感じる一杯を
日本全国津々浦々に美味しいコーヒー屋さんはあるけれど、SAMUEL ROASTERS(サムエルロースターズ)はその中でも唯一無二の魅力を持つお店。
本場イタリアのバリスタと、スペシャルティコーヒーのプロという、同じコーヒーでも全く違う分野の腕を極めた店主が「隠れ家」のように営む場所です。
華々しいキャリアを誇示することなく、ただ「美味しい一杯」と共に好きな時間を過ごして欲しい。
店主・高井さんの想いが結晶のように形となった空間で、お話を伺います。
大好きなSAMUELと、気兼ねなく本格コーヒーを楽しむ店
SAMUEL ROASTERSがあるのは、錦糸町、両国、菊川の3駅が徒歩圏内となっている緑(みどり)エリア。
整備された広い歩道とひらけた街並みのせいか、周囲の繁華街に比べるとどこか穏やかな時間が流れているように感じます。
外観からは何のお店なのか分からないようなさりげなさから、常連さんたちは初めてこのドアを開けてやってくるお客さんを「勇者」と呼んでいるそう(笑)。とはいえ、そんな一見さんも充実したひとときを過ごすことができるので、どうぞご安心を。
扉を開けると、ふわりと香ばしいコーヒーの匂いとともに、カウンター越しに店主の高井さんが迎えてくれました。
カウンターの上にちょこんと座っているのは、サミュエル社長。SAMUEL ROASTERSの名前の由来になっている、可愛らしいお人形です。
「ちびっ子サム」の名前でかつて販売されていたもので、実はこのサミュエル社長は、高井さんが2歳の時からいつも一緒に過ごしてきた大切な存在なのです。
「サムたちを可愛いといってもらえるのも嬉しいし、私が自己満足のように突き詰めてきたコーヒーを『どう?美味しいでしょう?』とお客さんと一緒に楽しみたい。この店は“共感”の場所なんです」
そう話す高井さん。コーヒーのメニューも値段も書かれていない店内では、カウンター越しの和やかな交流が生まれます。
そして、気取らない雰囲気の中で提供されるコーヒーは、どれもハイレベルなものばかり。
何を隠そう、高井さんはコーヒーの国際資格である「CQIアラビカQグレーダー」「CQIロブスタQグレーダー」のほか、バリスタとして「イタリアンカフェテイスティング協会マスタープロフェッショナル」の資格まで保有しているお方。どれも取得が大変難しく、これら全てを保有しているのは日本で高井さんただ一人だそうです。
改めて店内をよく見回すと、その片鱗をあちこちに感じます。
また、SAMUEL ROASTERSで直接お客様にコーヒーを提供する一方で、BtoBのお仕事も会社として請け負っているそうです。
企業のカフェをマネジメントしたり、国際会議などの重要な催しで提供するコーヒー豆を焙煎したり、大規模なイベントの会場で振る舞うコーヒーを淹れたりと、お話を伺えば伺うほど、高井さんがいかにコーヒーのスペシャリストであるかを感じざるをえません。
「BtoBのお仕事では、バリスタとしてキリッと白いシャツにネクタイ姿だけど、ここでは、サミュエル社長のロゴがプリントされたオリジナルのパーカーで、ラフなスタイル。同じように、資格や実績は自己満足であって、この店に来る人にわざわざ知って欲しいとは全然思っていないんです。
ただ、美味しい一杯を味わってもらって、シンプルに『また飲みたい』という気持ちになって欲しい。過ごし方も人それぞれ好きなようにしゃべったり勉強したりしながら過ごして帰っていってもらえればいいなって。昔の子どもたちが学校帰りに寄り道していた駄菓子屋ってそんな場所だったと思うんですよね」
まるで2つの顔を使い分けるように、自身のお店ではお客様とのやりとりを何よりも大切にしている高井さん。
とはいえ、高井さんがなぜコーヒーの道を極めることになったのか気になりますよね。
コーヒーの神様が出逢わせてくれた道を、粛々と進んでいく
「34歳のときに病気をして、療養をしながら、友人に頼まれてランチ営業の調理補助をしていたんです。その時に初めて飲食業の面白さに気づいて。自分が作ったものを目の前でお客さんが喜んでくれて、お金を払ってくれるという“近さ”に感動したんです。
そこで飲食の道に進もうと専門学校の見学に行った時、開講したばかりのバリスタコースを担当していた『日本バリスタ協会』の篠崎さんに淹れてもらったコーヒーがすごく美味しくて。そこで『楽器の音色が演奏する人によって変わるのと同じように、コーヒーも淹れる人によって変わる』という話を聞き、かっこよさに惹かれて『バリスタコースにします!』って。それが全てのはじまりでしたね」
とはいえ、専門学校だけではエスプレッソマシンに触れる機会が少ないと感じた高井さんは、「カウンターの内側に立ちたい」とバリスタとして現場で働きながら経験を積みはじめます。
その職場で「きっと好きだと思うよ」と同僚に教えてもらったのが、清澄白河にある「ARiSE COFFEE ROASTERS(アライズコーヒーロースターズ)」だったそう。
「当時はスペシャルティコーヒーが今ほど知られていない時代で、アライズのコーヒーを飲んだ時に衝撃を受けたんです。それまで自分はバリスタとして成長する努力をしてきたけれど、それだけでは、コーヒー豆を淹れる腕を磨いているだけのように感じて。自分で豆を選んで仕入れ、焙煎士にもならないとダメだと思ったんです」
そこで、まずは自宅に置けるサイズの「ディスカバリー」という焙煎機を購入した高井さん。バリスタの仕事も続けながら、ARiSE COFFEE ROASTERSに通い詰め、オーナーの林さんが焙煎をする姿をじっと見つめながら学び、自宅で焙煎を試行錯誤する日々が続きました。
「ウチは母子家庭で娘を育ててきたのですが、部屋に娘の勉強机もないのに、焙煎機があるっていう(笑)。そこから自家焙煎した豆を口コミ専門で売るようになったのが、SAMUEL ROASTERSのはじまりです」
さらに同時並行で、東京の一等地に数多く展開をしている「AUX BACCANALES(オーバカナル)」の大型店舗である赤坂店で働き、バリスタとしての経験も積んでいったそう。
「バリスタとして自分は『出来る方』だと思っていたのに、オーバカナルではボコボコに鍛えられましたね。バリスタとして以前に、『サービスとは何か』を叩き込まれた3年間でした。
さらに、身につけられるものはできるだけ自分のものにしたいと思って。バリスタの出勤時間より早い始発の電車に乗って、ブーランジェリーやパティスリーの手伝いもしながら本場ヨーロッパの製菓技術を学んでいきました」
そんな多忙な日々のなか、師匠と仰ぎ続けていたARiSE COFFEE ROASTERSの林さんから、「良い焙煎機が中古で見つかったよ」と連絡を受けます。これが、2018年にSAMUEL ROASTERSがオープンするきっかけとなりました。
「さすがに自宅に置けるサイズの焙煎機ではないし、自宅からも近いこのエリアでお店をはじめようと物件を探していたときに、この場所に出逢ったんです。
当時は先約があったのですが、どうしてもここが良いと思っていたところで急にその契約が流れ、私の元にまわってきてくれて。これもきっと『コーヒーの神様』が後押ししてくれているんだろうなと思いました」
「バリスタの講師だった篠崎さんや、ARiSE COFFEE ROASTERSの林さんに出逢えたこと、プロの現場で経験できたことや、焙煎機やこの場所のこと、全てが『コーヒーの神様』からの『このまま行きなさい』という天命で、これが私の天職だと思っています」
さまざまなドラマと、妥協のない努力、そして何より「好き」という熱意。それら全てが、SAMUEL ROASTERSの美味しい一杯につながっているように感じます。
ゆとりのあるこの場所で、遊ぶように仕事をしていく
墨田区緑という場所にこだわりを持つ高井さん。最後に、この街の魅力についても伺いました。
「このエリアで暮らそうと決めた理由は、子育てなんです。娘を育てていく上で、いくつか小学校の場所を検討していた時、この辺りの子どもたちが一番挨拶をしてくれて。住んでいる人たちも穏やかで、道も整備されていてアクセスも良いし、すごくいい街だなと思っています。お店に来てくれる方も心にゆとりがある気がしますね」
大切に育てた娘さんは20代になり、今では高井さんの会社の一員となり、共に楽しみながら仕事をする存在でもあります。
「今のメンバーは私も含めて4人。今後は若い子達が自ら運営する店舗も増やしたりしながら、私も負けないように新しい大会などにチャレンジしていきたいと思っています。
それから、なにより楽しむこと。会社では『仕事は最大の遊びであれ』というのを合言葉にしているんです。人生の大半が仕事をしている時間ならば、その仕事が遊びだと感じられたら最高じゃないですか。
だから、私にとってSAMUEL ROASTERSは楽しくて仕方がない場所。私がコーヒーの道を突き進んでいくのを、お客さんたちが『次は何をやるのかな?』と楽しみにしてくれているのがうれしいです」
一杯の美味しいコーヒーの背景に、数々の物語や哲学。それらは確かにあるのだけれど、決して押し付けない、自然体で自由なコーヒーのお店。
唯一無二の空間に、あなたも足を踏み入れてみませんか?
素敵なHello!が、今日もあなたに訪れますように。
(取材・執筆:山越栞 撮影:花田友歌)
住所 | 東京都墨田区緑2-14-8 Google mapで見る |
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営業時間 | 12:00~19:00 |
定休日 | 水曜・木曜 |
TEL | 03-3632-3636 |
SNS | Instagram , X , facebook |
etc. | Get!East Tokyo |
※本記事に掲載している情報は、2024年3月時点のものです。
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